ウチキフィルム | ウェディングムービー・結婚式エンドロール撮影

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結婚式と台風の話

台風と結婚式

2021年の8月11日。
先週のブログで予告していましたが、予定では9日から本日まで北海道でプランナーさんとフォトグラファーさんと一緒にロケーションをしている予定でした。
ところがトリプル台風!が日本直撃!
結婚式当日であれば、迷いなく現地へというところですが、今回は撮影するということが第一義のお仕事。
結婚式の当日の雨や風は「それも思い出」と言えなくもないですが、ただ撮影するという場合には雨は降らないほうが良いし、風はそよぐ位にしてほしい。
そんなわけで8月8日、前日判断でリスケとなり今月末に延期。
ぽっかり出来た夏休みを娘と楽しんでいます!
(最近寝返りが打てるようになりました!)
今回は台風と結婚式について体験談も交えて書いてみます。

10月の台風

数年前の10月の2週目の週末の話。
体育の日(当時)が絡む3連休は例年、婚礼業界の秋の繁忙期最初の大一番の日程でした。
ウチキフィルムでもありがたいことに1日目は午前中に恵比寿、2日目は午後に高崎、3日目は逗子と連日ご依頼を頂いていました。
1日目と2日目はどちらも撮って出しエンドロールのご注文で2名体制。

ところが、その週のはじめにはもう超大型台風が来ることが分かっていました。
午後とはいえ高崎への移動が心配だったので、早々に前泊の手配を始めました。
1日目と2日目のスタッフが違ったので、2日目のスタッフには前泊の打診をして、スタッフの泊る場所も確保します。
替えのいない立場のフリーランスは何があっても現場にたどり着くことが使命です。
なので多少の経費は多めに見つつ、安全策を取ります。

そして台風直撃の前日、それは恵比寿での撮影の前日でもありました。
その頃にはテレビでこの台風は「命の危険がある災害級の台風」ということで最大の警戒を呼び掛けをしていました。
ネットでも、SNSでも結婚式を延期するカップルの話も出ていました。

僕が1日目に撮るカップルにも確認すると、決行ということで返事がきました。
台風の予報は1日目の午後に上陸して、その日の夜中には抜けていくだろうということでした。
在来線を含めた各交通機関は早々に午後以降の運休を決め、首都高などの主要な高速道路も閉鎖が決まりました。

1日目の午前の恵比寿には問題なく到着できることは分かったので、2日目のことを考えます。
2日目のスタッフにスケジュールを確認して、一日動けるとのことだったので、新幹線が動いている早めの時間に高崎に移動して前泊してもらうお願いしました。
さて、自分はどうしよう?
恵比寿のホテルの結婚式が14時に終わって、そこからは新幹線も在来線も止まっています。
次の日に早朝から復旧するの期待して一晩を待つか?

結論から言うと僕はタクシーに乗りました。

披露宴のお開きと同時に荷物をまとめて、お見送りの撮影や宴後のイメージカットの撮影はスタッフに任せて、早々にホテルの前に泊っていたタクシーに乗り込みました。
運よく?あまり状況のわかってないドライバーさんで高崎行きを2つ返事で受けてくれました。
そこからはまぁまぁの珍道中でしたので、箇条書きでダイジェスト形式で紹介します!

・ドライバーさんが封鎖されてる首都高に乗ろうとする。(計2回!)
・下道で向かうも全然ナビを使おうとしない。(結果グーグルマップでナビをするはめになる)
・途中、スマホの警報アラームが鳴ってドライバーさんがビックリするが、笑ってごまかす。
・実際に入間川のあたりでマンホールから1メートルくらい水が溢れてた。(命がけ)
・ドライバーさんがワキガ(4時間)
・基本タクシー運はない!笑
・料金は40,000円!笑

そんなわけで4時間後に高崎駅前の東横インに無事に到着。
スタッフの無事到着のお知らせも来ていました。
高崎でもダムが溢れたみたいなニュースが入っていたけど、とりあえず明日に向けて各種充電開始。
明日の2人にも報告と確認を済ませて、1日目終了。
翌日、テレビのニュースは水に埋もれた長野新幹線の映像が流れていましたが、結婚式は予定通り。
時間通りに現場に入り、無事に撮って出しを終えて帰ってきました。
「Show Must Go On!」ではないですが、「Wedding Must Go On!」みたいな感じですね。
とりあえずフリーランスでウェディングに関わる使命みたいなものは果たすことが出来て自己満足でした。
というのが、ほんの数年前の出来事でした。

10月はウェディングシーズン

以前は10月は秋の行楽シーズンに入り、気候は天気は安定していて、暑くもなく寒くもなく、台風シーズンももう終わっている。
1964年の東京オリンピックはこの時期に行われているし、開会式が行われた10月10日は晴れの特異日なんて話もある。
だから10月の空は清々しく晴れ渡っている。
そんなイメージもあったかと思います。
結婚式にも最適なシーズンというイメージがあり、実際に結婚式の件数も多いです。
10月~11月で1年の半分くらいの仕事しているんじゃないか?と思う年もあります。

ここ数年はどうでしょうか?
関東について言えば雨も多いし、10月の中旬までは災害級の台風がいつ来てもおかしくない。
人気のシーズンではあるけど、お世辞にもお勧めの時期ではないです。
これから少しずつカップルの中にも、10月の前半は避けようとする傾向は出てくるんじゃないかなと思います。
この自然な流れを、結婚式場が前年の実績を達成するためだけに、強引に捻じ曲げることがないことを願います。

天気のことだけで言えば、個人的には10月の前半なら12月の前半の方がおすすめです。
みんながイメージするほど寒くもないし、天気も安定していることが多いし、紅葉綺麗だし。
11月よりは結婚式場も忙しくないので、繁忙期の変な弊害を受けづらいというのもポイントです。

地球規模の気候変動

10月の台風が増えてきたことは、たまたまの異常気象というよりは、地球規模の気候変動の影響と捉えた方が良いんじゃないかなと考えています。
数年間目を瞑っていれば、元通り結婚式に最適な10月が戻ってくる、ということはないでしょう。

気候変動で言えば、ここ数年は台風だけでなく、「雨」の意味合いすらも変わってきています。
数年前の7月の西日本豪雨でたくさんの命が奪われました。
その時も土曜日で、担当していた結婚式のゲストの半分が移動手段がなく会場に来られないということもありました。
(会場は新宿でしたが、お2人の出身が西日本だったのでご親族の大半が来られませんでした)
「Wedding Must Go On!」みたいな雰囲気がいずれ誰かを殺してしまうような、そんな気候に日本が突入していると考えた方がよいのかなと思ってます。

結婚式の在り方について

これまでの結婚式ビジネスは『最高の1日』の価値をアピールすることによって利益を最大化してきました。
その日のために数十人というスタッフが揃い、食材を用意し、その日のためにドレスやタキシードを準備する。
だから相応以上の料金が設定されていて、機会損失を名目に高額なキャンセル料が設定されている。

それは気候が穏やかで医療も充実した、平和な日本というバックボーンがあったから出来たお話でした。
ところが、今その前提はほとんど壊れています。

年に1度は大きな台風や大雨で『移動すること=命を懸ける』という日が訪れるようになりました。
パンデミックという映画の中で起きていた出来事が、新型コロナウイルス感染症により現実に起こり得る危機として認識を新たにされました。

『最高の1日』というものの裏側にあるリスクを隠す事が難しくなっている。
そのことは『最高の1日』を保証することで、通常とは異なる契約を交わす結婚式ビジネスに本質的な変更をもたらすかもしれません。
通常とは異なる契約とは、ほとんど何もサービスをしていない状況にも関わらず、その1日を予約しているというだけで多額のキャンセル料が発生してしまう契約です。
もちろん1年前に結婚式場を探す人よりも半年前に結婚式場を探す人のほうが、現状でははるかに少ないので、ある程度仕方のないシステムです。
ただ台風や自然災害、パンデミックが万に一つではなくなりつつある中では、カップルも結婚式場もお互い首を絞めあっているようなそんな息苦しい状況になっていると思います。

さぁどうしよう?
「イマココ」って感じでしょうか。
いくつか考えられる流れを箇条書きしてみます。
(タクシーの珍道中と同じ手法ですみません!笑)

・さらに規模の小さな結婚式・披露宴が増えていく。
・写真撮影(前撮り)、結婚式、パーティーと切り分けて、リスク分散が進む。
・そもそも結婚式をしなくなる人がさらに増える。
・写真撮影のみの需要が増え、写真撮影についてのみ単価が上がる。(そこはぜひムービーも一緒に!)
・親密な人とのパーティーみたいなものの需要は生まれそう。(それはそれで素敵)

もう一つの方向としては、
・リアルな結婚式とオンライン参列の融合
というのが高いレベルで出来れば、それは明るい未来にもなりそうですが、災害との組み合わせは悪そうです。

こんな感じかなぁ、と思いますし現実的にはフォトウェディングの需要が高まっているなと感じます。

もちろん、現状の維持という流れもあると思います。
数年経てば、コロナは過ぎた事として、台風は年に一度のツイてない日、そんな風にやり過ごす未来も想像できます。
それが利益を最大化するなら、それも正しいということになるのかもしれません。

ただ、今この時に多様な選択肢が生まれてくることは、カップルにとってはとても良いことなんじゃないかと考えます。

仕事の在り方について

大きく結婚式の在り方についての話をしたので、最後に自分自身について。
数年前の台風でのタクシー移動の後、規約を変更しました。
交通手段のない時や命の危険があるときは、無理をせずに返金対応をさせていただくことにしています。
結婚式は依然一生に一度の大切な一日ではありますが、命は一つなのでご容赦いただいています。

引き続き、結婚式の当日を主戦場にしていきますし、そこが自分の能力を最大に活かせる場所だとは思っています。
とはいえ、2021年の冬~2022年の春くらいまでは、コロナの影響でかなり市場が縮小を迫られると予想しています。
なので、北海道のロケの話もそうですが、フリープランナーさんが手掛けるフォトウェディングにも一枚噛んでいきたいなと企んでいます!笑
ビデオグラファーだからこその提案など、出来ることは色々あるはず。
当然、映像だからこそ残せるものもあります。
ただのフォトウェディングではない試みにも、お声がけ頂いていたりしているので、そういうことを新たにしていけたらいいなと考えています。

以上、長くなりましたが前半は台風の時の経験談、後半はこれからの結婚式の在り方についての2部構成でお届けしました!
これからの波も台風もなんとか乗り越えつつ、精一杯の仕事をしていきたいと考えています。
引き続きよろしくお願い致します!

ウチキフィルム 打木 健司